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及川勝吾役 長谷川湧輝 インタビュー

  • 21lastplay
  • 2021年3月12日
  • 読了時間: 12分

聞き手:夏樹役 春楓


ーではまず、名前、学年、役名を教えてください。


長谷川:長谷川湧輝です。 学年はID21、4年生で役名は及川勝吾です。


ー長谷川さんが演劇を始めたきっかけはなんですか?


長谷川:演劇から入ったっていうよりかは、俺は歌劇(ミュージカル)から入っていて。中学校高校で合唱部で歌を歌ってきて、その流れでICU歌劇団に入ってそこで表現する楽しさや演劇の楽しさに気付いて。ずっと黄河砂に出たいと思っていたけど歌劇の公演があるし、祭(ICU祭実行委員会)もやってたから厳しい状況が続いて…それで4年生になって祭(ICU祭)がなくて歌劇の活動も縮小気味だったから、最後の最後に黄河砂に出てやろうということで今に至るという感じですね。


ー長谷川さんが黄河砂で演じるのは実は初めてですね。


長谷川:ステージ上にはいるけど、黄河砂としてではないのよ。歌劇団でもあんまりオーディトリアムホールに立った経験はなかったね。


ーストレートプレイ(歌やダンスのないセリフ中心の劇)をやってみて、どうですか?


長谷川:楽しいんだけど、率直にやっぱりミュージカルと一番違うと思うのは、ミュージカルは感情が高ぶったら歌うものだから、まずそこで自分の感情を自分で表現するっていうところが結構難しい。音楽だったら音の変化とかで勝手に気持ちが上下するようになるけど黄河砂だったらそれを自分でやらなきゃいけないっていうのと、あとはセリフの多さだよね。普段のミュージカルの台本ってみんな思っている以上にペラペラだから(笑)。ほとんど楽譜だし。っていう意味では、今回マジでビビったよね。初めて黄河砂の脚本ちゃんと見たけど(ページが)多すぎないか?と思って。とにかくセリフを覚えるのがまあ、老いも感じるし、覚えられなくなってきたなっていうのと、ミュージカルよりもセリフが増えたわっていうのを同時に感じた。一番の大変ポイントはそこですね。


ーでは、今回やっている役についてお聞きします。勝吾はどんな人ですか?


長谷川:10年も高校にいるし……なんだろうな、ぶっ飛んでるやつ、だよね、一言で言うと。でも、二面性があるなっていうのはずっと思っていて。めちゃめちゃおちゃらけてるやつだけど、ただおちゃらけてるだけじゃない。ちゃんと考えてるところは考えてるし、登場してからはしばらく『なんだこいつ、変な奴だな』みたいな感じだけど、でも後々になってくると『こいつは十何年高校でただ遊んでただけじゃないんだな』っていう。そこは演じている自分でもちょっと勝吾を掴みきれてない部分が多いし、俺の今の想像よりももっと実は頭が鋭い気はする。


ー勝吾と自分の共通点や、逆に自分とは違うところ、また演じやすさについて教えてください。


長谷川:圧倒的に演じやすいです。これまでやってきた役の中でも、多分1位2位を争うぐらい演じやすい。口調も普段の自分に近いし、喋り方だったり、適当さも俺にそっくりだなと思うところはあるから。そういう面では演じやすいよね。あとは思い切りの良さは演じやすいっていうより、普通に勝吾の好きなところかな。ちゃんと物事をはっきり言うし、自分の芯が通っているっていうところが勝吾の一番の強みだなって思う。まあやりたいことは共感できるけど、多分そんなに器用なタイプではないんだろうなって気はする。ちゃんと頭で考えて行動しようとしてるけど、でもたまに考えと行動が合ってないことがあるし、そういうところは可愛げのあるやつだよね、ああ見えて。考える前に行動しちゃうところは自分と似ているのかもしれない。


ー今回はもともと舞台でやるはずの作品が、映像作品となりましたが、どうでしたか?


長谷川:苦労は山ほどあるよ。いつもだったら、客席から舞台の上って細かいところまで見えない。 1、2、3列目とかだったら、表情の微妙な変化とか、些細な動きって見えるけど、それより後ろの人は見えないから。むしろいつもだったら「動きをもっと大きくしないとわかんないよ」って言われるけど今回映像で、顔しか映らないカットや手先だけの画とかあるじゃん。そういうのってものすごく細かいところまで見られてるんだろうなっていうか、それしか見てないから…っていうのが難しいよね。同じシーンを何回も何回もやって、いろんな角度から撮ることもあって。いつもだったら一回やっちゃえばそれで終わりだけど、今回はずっと同じシーンを同じ完成度にしなきゃいけないっていうのが難しかった。とはいえ楽しいよ。逆に映像の良い所っていうのもあるし。シーンを何回もやるからひとつひとつ思い入れがどんどん強くなるっていうのと、区切って稽古できたり稽古してすぐ撮影できるから。そういう意味では、普段よりも楽、ていうのがいいところだよね。短期的な記憶で覚えればいいから。そこは良かったっていうか、いいところなんだろうな。


ー本来の形態であれば同じシーンに出ない人も稽古で会えるけれど、今は何もないのにわざわざ来るのは難しいですよね。


長谷川:勝吾は一番色々な人と関わるはずの役なんだけど、俺がすでに撮影してるシーンって、夏樹(演:春楓)と先輩たち(じーん演じる晴美と十文字晴演じる透也)しかいない。


ー現役の演劇部ではまだ集まれていない?


長谷川:そう、大変よだから。でも今回初めましてからの人ってそんなにいないから。杏樹ちゃん(瑠璃子役)くらい。他の人たちはみんな、会ったことあるし仲良い人だったから、まだ良かったなって気がする。今回の作品はそこが良かったよね。


ーでは、この作品の見どころや好きなシーンを教えてください。


長谷川:自分が出てるシーンだと、まだ撮り終わってないけど、過去編の部室でビデオを見ているシーンは絶対にいいと思ってる。(シーン13。ここは撮影しきれずお蔵入りになっています。)そもそも他のシーンの作り方とは違って、撮影の仕方が違うわけだし、(このシーンは過去の演劇部がビデオカメラを購入し使ってみたという設定のシーンになっており、ホームビデオのような味わい深いシーンになる予定でした)あれも超楽しいと思う。 演じる上では一発撮りなわけだしめちゃくちゃ大変だけど、でもあのシーンはやっててすごい楽しいしね。 あれはこの作品の通しての見どころのひとつになるって思う。自分が出てないシーンでは、 シーンをまだ見れてないからセリフしか知らないけど… 見てみたいシーンは、俺が出ていない演劇部のシーンが結構あるのよ。普通に微笑ましいシーンは早く見たい(笑)。見てて微笑ましいなってなるのは、ありすけ(朔太郎役、有賀大輔)が後輩たちと一緒に高校生中学生しているシーンはちょっと見たいよね。ありすけは普段おじさんなんだけど……できるんだよなぁそういうの。


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歌劇団で稽古をしている長谷川(前)と有賀(後ろ)


ー現在の演劇部員たちの様子も微笑ましいですが、大人な雰囲気が漂う勝吾や透也が、過去編のシーンでは学生らしく振舞っていて、そこにギャップを感じて、可愛いですね。


長谷川: 透也は過去編以外、だって全部敵役みたいな感じだから。どんな敵役でも背景はあるし、可愛かった時はあるし。他のシーンでは、もんじ(透也役、十文字晴)はめちゃめちゃシリアスな感じに作ってくれるし、いつものもんじのイメージとは全然違う感じの透也になってると思うけど、あのビデオのシーンはただのもんじなんだよね。シーン中では先輩後輩が逆転してるけど(※本来は長谷川が先輩で十文字が後輩)、でも振る舞い方はいつものもんじと変わらないし、そこが面白いよね。


ーでは、大学で、演劇界隈で過ごしてきた思い出を教えてください。


長谷川:初めてホールの舞台に立ったのが、歌劇団の18卒業公演だったんだよね。本格的に演劇の世界に入ったっていう意味では、あれが最初だから、あの時俺がすげーと思ってた18と、今の24と俺らの関係って同じなわけじゃん。だから24達はあの時俺が感じたみたいに、俺らのことをすげえって言ってくれるのかなっていうのが、ちょっと大変ちゃ大変だし、俺が4年間でどれだけ成長したんだろうってたまに不安になるよね。でもそれは、なんだかんだ取り繕っていかなきゃいけない(笑)。でもそういう風に思ってほしいよね。俺から見て、21は仲いいし、演劇を作る力量もすごいと思うし、そういう意味では21は俺から見てもすごい代だったなとは思う。人数もいるし、みんな人望はあるほうじゃん。みんなすごく経験積んでるし、4年生になってもまだ続けられてる人もいるとか、それこそ外部で活躍してる人だってこの代は多いし。っていう意味では、この代で演劇できて良かったなって思う。上の代とか下の代とかで比較するものではないけど、俺は21でハマったなっていう気がする。


ー長谷川さんは、舞台で緊張するタイプですか?


長谷川:…あんまりないね。確かに、今までほどほどに緊張はしているけど、そんなにガチガチに緊張することはなかった。それこそ合唱やってたっていうのはあると思う。合唱もすごい数の観客の前で歌っているとか、自己表現しているっていう意味では演劇と変わらないし。中高でそういう経験を積んできてるから、 大勢の前で何かをすることには緊張しなかったのかなっていうのはある。でも緊張はしてないことはない(笑)。


ー舞台上では何を考えて立っていますか?


長谷川:良くも悪くも、俺が今までやってきた役って俺がやりやすい役、ていうかすごい思考回路が似ている役だったから、役自身の、俺自身のことっていうよりかは、周りと馴染んでいるかとか、他の人に気を向けてることの方が多いかな。自分のセリフは念頭にはあるけど、演じる役が普段の自分とあまり変わらない分、他の人のことを見ちゃうかなっていう気がする。


ー今後、また演劇をやる機会があれば、どんな役やジャンルにチャレンジしてみたいですか?


長谷川:コメディをやってみたかったよね。歌劇でもそんなにコメディやってないし、黄河砂もめちゃくちゃシリアスか、青春モノとかが多いから、熱海(劇作家つかこうへいによる代表的戯曲『熱海殺人事件』)レベルまで振り切ったコメディがね、やってみたいっちゃやってみたいよね。あとは大道具とか小道具とかを最小限にした、役者さえ減らしたタイプの劇とか面白そうと思うよね。大変なんだろうけど。体ひとつで勝負するタイプのやつもやってみたかったなぁと思います。


ー劇中のテーマ、「繋いでいく」に関連して、演劇界隈や、ICUの後輩たちへメッセージをお願いします。


長谷川:キャスト目線でいうと、舞台に立って演じることが出来るって、相当貴重な体験だと思うし、自分じゃない誰かの人生を歩む事って普通ないと思うのね。「舞台の上でだったらどこまでも行ける」とか「何にでもなれる」ってただのセリフじゃなくて、本当にその通りすぎるから。この先もいくつも舞台に乗って、色々な人の人生を演じてみて、いろんなことを学んでほしい。自分とは全然違う、正反対の考え方の人の役とか絶対にあるし、それこそ『こいつとは相容れないな』っていう役とか絶対あると思うけど、そういう時ほど実はチャンスなんだろうなっていう気はする。演じる上でどうやってもそいつと仲良くならなきゃいけないわけだし。だから思う存分楽しむしかないよね。いくら稽古中とか鬱になろうとも(笑)。でもそれだけ考えられることも幸せなんだろうなっていう気もする。だからそういう時間を大事にしてほしいですね。


ー最後にこれだけは伝えておきたいということはありますか?


長谷川:ないよ(笑)。なんだよそれ、フリートークかよ(笑)。


ーもんじと共演できて嬉しい、とか。


長谷川:そりゃ嬉しいは嬉しいよ。こんだけ仲良い後輩とまだ一緒にできるっていうのは嬉しい。それは別にもんじだけじゃないよ、みんな素晴らしいし、そういう意味で俺は全然満ち足りてますね。…そりゃ1番はもんじよ(笑)。まさか俺、もんじとまたシリアスなシーンで演劇するとは思わなかったし。今回は以前の共演時とは違って半ば敵対する役ではあるけど、でももんじと台詞の応酬し合うのは楽しいよね。


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歌劇団での長谷川(左)と十文字(右)


ー今回共演が初めての人は多いですよね。


長谷川:そうだね、半分は初めて共演する人かもしれない。……春楓と共演は初めてだね……初めて共演する人は、有紗ちゃん(育美役)もそうだしるり(七星役)も実はそうだし……じーん(晴美役)は……共演ない。演技指導で同じ公演にいたり、宣伝美術にいたりとかしたことはあったけど確かに共演は初めてだね。共演したことない人は多いわ、そういう意味では。


ーそういう意味では、長谷川さんの初共演の人との関わりや、初のストレートプレイへの挑戦が楽しみですね。


長谷川:俺のことを普段から知ってくれてる人とか、歌劇の俺を知っている人からしたら、とても新鮮だと思う。「あいつが出てるんだから歌わない訳ないだろ」ってなるかもしれない。今のところ演出は歌うシーン作ってくれてないけど(笑)。もしかしたらあるかもしれないけど。あるかないかは見なきゃ分かんないね。


ーそこのところも楽しみにしていただいて(笑)。それでは見てくれる人に意気込みやメッセージをお願いします。


長谷川:まさか4年生の卒業間際になってストレートプレイをやるとは思ってなかったし、これがこんなに大掛かりなもので、手の込んだことをやるとは思ってなかったけど、卒業前の最後の功績というか、俺がICUに入ったっていうのが残る作品になればなっていうつもりではある。まして今回映像だから、形に残っちゃうし(笑)。本当に「長谷川は4年間何してたんだ」って言われないようにしたい。舞台上の俺を見てくれてる人も、普段の俺を知ってくれてる人も、「あいつ4年間でここまでできるようになったんだな」って思ってくれればね、いいなって思うよね。まあ直接その声をあんまり聞けないっていうのは残念なところなんだけど…ツイッターのハッシュタグ(#ハルカケ で是非感想をつぶやいてください!)とかで言ってくれたら嬉しいよね。あとはもう、この作品はそれこそ演劇自体がテーマだから。やってくれてるキャストの後輩たちもそうだし、劇団に関わってる人たちも興味ある子たちもみんな良い刺激を得てくれればなと思う。今まで演劇に関わってこなかった人たちも、みんな学生生活を送ってきたわけだから、何か刺さるところあるんじゃないかなっていうのは思ってる。


ーあなたにとって演劇とはなんですか?


長谷川:それこそるりともちらっと喋ってたんだけど…嬉しいことに俺たちの舞台を観てついてくれてるファンって少しはいる。それって俺らについてくれてるファンなのか役についてくれてるファンなのかっていう話、 俺ら個人についてくれるよりも役にファンがついてくれてるほうが役者冥利に尽きるよねっていう話をしていて。そういう意味では演劇とはなんぞやっていう話はそこにつながってくるんだろうなっていう気がする。いかにお客さんたちをその作品の世界観に惹き込むのかとか、自分自身をその役としてどこまで表現できるのかっていうのが多分演劇の核にあるんだろうなっていう気がする。自分が20年間生きてきた人生を置いといて、他の人の人生を表現するっていうのは、それが許されるのって演劇だけだなって。まあ贅沢なことだよね演じるっていうのは。やってみてから大変なんだなとかちょっと違うなとか思えばいいし、でもやらないとそれすらもわかんないことだから、ちょっとでも興味あるんだったら試しにやった方がいい、ていう感じです!


ーありがとうございました。

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