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東條育美役 遠藤有紗 インタビュー

  • 21lastplay
  • 2021年2月16日
  • 読了時間: 12分

聞き手:夏樹役 春楓、演出 寳井真友


ーではまず、名前、学年、役名と、他に役職に就いていればそれも教えてください。


有紗:遠藤有紗です。ID23の2年生で、役は東育美です。演出補佐もやっています。


ー有紗さんが演劇を始めたきっかけはなんですか。


有紗:高3の受験期に勉強が嫌になって、漫画にはまって、その漫画のアニメにもはまりました。そこで声優さんという職業があることを知って、演技に興味を持ちました。大学に入るときにサークルをどうしようかなと思っていたんですけど、入学前から演劇サークルに興味があって、体験稽古とかにも参加して、いいなと思ってはいました。


ー有紗さんはバレエをやっていたということですが、表現の世界に入ったのはバレエが最初ですか。


有紗:世間一般的に見ると、バレエも演劇も舞台の上でやるっていうので大きなくくりとして同じになると思うのですが、私にとっては別物で。舞台の上はずっと”しゃべらない場所”でした。バレエはやっていたんですけどミュージカルとかは全然興味がなかったので、初めて『暁之夜』(黃河砂2019年春公演)を見て、舞台の上で人がしゃべっていることにまず「はっ!」ってなって。そのあと『白路座夢行脚』(ICU歌劇団2019年秋公演)とかもみて、「歌って踊ってるな」っていう(笑)。すごいギャップを感じてたので、今から考えると、バレエから演劇へと一続きに感じるようにも思えるのですが、全く別とも思えます。


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一回きり劇場で演技している様子


ーなるほど。では、今回演じている役についてお聞きします。育美はどんな人ですか。


有紗:自分の理想と現実の乖離に打ちのめされている人です。そのギャップを埋めるために色々しようとはしてきたけど挫折してて、結果的に色々な努力とかを外に出せなくなっている人です。


ー育美と有紗さんの共通点、あるいは違った点はありますか、また、演じやすい点、演じにくい点はありますか?


有紗:似てるところは、「わっ」ってやられるとめっちゃ驚くところで、ちょっとの刺激で驚きます(笑)。作中には驚かされるシーンはないんですけど。でも急に声かけられたらとても驚いたり逃げたりすると思うので、そういうところはちょっと似てるかなと思います。


違うところは、難しいな(笑)。自分が内向的であるということを育美は認めているというか、自分はそうだと思っていて、それを周りの人にもそういう風に接しているところ。私は、育美よりはもうちょっとがんばって人と接しようとしてると信じたいです(笑)。


全体的には演じやすいんだと思います。結構もしょもしょしゃべるし。負の部分みたいな、じめっとした部分を意図的に出すのは難しいです。


ー今回はもともと舞台でやるはずの作品が、映像と文字で提供されることになりましたね。撮影は黄河砂ではやってこなかったことですが、やってみてどうでしたか?


有紗:楽しいですけど、すごく難しいです。毎回本番みたいな。毎回気持ちを最大限まで準備しなくてはいけないのはすごく難しいです。あと、舞台だとやっぱり独特の緊張感みたいなものがあるので、それがない中で撮影するのは結構難しいと思います。


ー有紗さんは舞台の方が好きですか?


有紗:うーん、そんなこと言えるほどまだ舞台に立ってないですね(笑)。


ー有紗さんが舞台に立ったのは黃河砂23デビュー公演と一回きり劇場(ICUの舞台芸術に関わるサークルが合同で行った公演)だけですもんね。今回の話は舞台の話ですが、もし今後また舞台に立つ機会があったら、やってみたい役ややってみたい舞台のジャンルはありますか?


有紗:できるかちょっとわからないですけど、もっと「パシッ」とした役ですね(笑)。今回の役だと透也先輩みたいな。ジャンルは、伏線がいっぱいあるやつをやってみたいです。あと、時間軸がここが今で、次が過去で、未来でっていうごちゃごちゃしたのをやってみたいです。大変そうですけど!


ー有紗さんにとって演劇とは?


有紗:自由でいられるものだと思います。すごい決めゼリフみたいでいやですけど(笑)。日常生活のやらなきゃいけないこととか、こういう風に生きたいみたいな、そういう「すべき」みたいな心情から抜けて役になるからこそ、なんでもできるんです。自分だと絶対やらないし、できないし、やりたくないことも、演劇っていう、お芝居っていう「口実」があるから、できるみたいな……あまりいい表現じゃないですけど。この半年ぐらい、ずっと家にいて、誰とも会わなかったりして、結構一人でいるのが好きだからむしろありがたいみたいに思っていた面もありました。でもやっぱりいろんな人と会ってお芝居すると、一人で「遠藤有紗」でいた時には言えないこととか、できないことも、役になるからできるっていうのもあるし、役になってるその余波で、役じゃない、自分の時でもそれに乗じて言えたり、できたりするんです。演劇ができない、やっていなかった期間を経て今できるようになって、1年生の時大学に入ってやってみてよかったなって思ったし、またできてよかったなって思いました。

昔の私だったら、「舞台上でしゃべるなんてそんなことできない」って思ってたと思います。人前でもしゃべれないし、演技とか恥ずかしくてできなかったはずなんですよ。デビュー公演の時とかは「いや、ここはこういう場所なんだから、そういう考えを捨ててやらなければならない」って言い聞かせながらじゃないとできなかったんですけど。まあ最近はちょっと楽しくやってるかな。今でもエチュードはすごい苦手ですけど。


ー初めて舞台立った時、有紗さんにとってはかなり試練だったんですね。初めて舞台に立った時のことは覚えていますか?


有紗:本番よりも稽古が大変でした。全部ここはこういうふうに読む、動く、こういう顔をするっていうのが決まっていて、それを練習した後だったらいいんですけど、まだ決まっていなくて、試行錯誤する過程を人に見られるのがすごい嫌で。演技プランが決まった後に、それができるように練習してる過程を人に見られるのもすごい嫌で(笑)。だからそういう時は、「いや、そういうことを思う場所ではない」と思いながらやってました。


ーそうだったんですね。ではこの作品の見どころや好きなシーンはなんですか。


有紗:見どころはやっぱり七星(演:るり)っていう人物を触媒にして、演劇部も変わるし、ひいては頭の硬い透也先輩(演:十文字)を、改心じゃないけど、懐柔?させるところが一番の見どころなのかなって思います。一番奮闘してるのはいろんな意味で七星なのかなって。好きなシーンはいっぱいあるんですけど、一番に思い浮かんだシーンは、晴美(演:じーん)と透也が口論して、透也が出て行っちゃうところが結構好きです。


ー「なんで推薦蹴っちゃったんだよ」っていうところですよね。


有紗:撮影の練習を見て、息合ってるし、すごいなって思って。本当に本人たちみたいですごいなって思ってとても好きです。あと、後半の七星と育美の2人のシーンも好きです。育美が七星に対して自分の気持ちを言うシーンなんですけど。あそこがわりとほぼ初めて声を出して撮ったシーンだから、そこで役の感覚を掴んでいきました。まだ全然分かってないけど(笑)。なので、結構好きです。あと、まだ撮ってないんですけど、朔ちゃんを取り戻すために、「百瀬朔太郎さんは」って手紙を読んでるけど、上下逆なところが好きです。


ーあそこもいいシーンですよね(笑)


有紗:挙げればきりがないんですけど、地の文(映像や音声では演じていない部分)の透也先輩にいじめられるところが、個人的に育美がかわいくて好きです。もんじ先輩(透也役:十文字晴)と本当にかけあいとかしたことがないから、地の文だけどこの間読み合わせでできて私はとってもうれしかったです。


ーしっかり二人でしゃべってるのはそこがほぼ唯一でしょうか?


有紗:最初の方で、「まぁがんばるんだな」みたいなことを言われて、立ち去られるっていうのはあるけど、そこが唯一ですね。あと、晴美と夏樹のシーンは全部すごい好きです。読み合わせでしか観てないんですけど、うわーん、ひーん、うーん、みたいな感じでした(笑)。


ー今回はお兄ちゃん(東條晴美、演:じーん)がいる役ですが、それについてどう思いますか。

有紗:私ずっとお兄ちゃん欲しかったので、嬉しいです。でも、ムービーの本編では全然絡まないのでちょっと悲しいです。


ー幼い日の二人のシーンいいですよね。一緒に出演するムービーが全然ないので撮影もなかなか一緒にならないのが残念ですね。


有紗:じーん先輩をたまに見つけて、「はぁ~っ」ってなるくらい(笑)。


ーでは、今回の撮影中の思い出はありますか


有紗:今までの公演は、デビュー公演はほぼID23の同級生ばかりで、一回きり劇場は先輩もいたけど演じるのは一人だったので、今回初めてちゃんと先輩と絡みました。こう、読み合わせのときもそうなんですけど、全然違うなって思って。自分がまだまだでとても悲しい。


ーどうしてですか(笑)先輩達に混ざっても違和感なくてスーパールーキーだと思いますよ


有紗:これ春楓先輩(聞き手)に言った気がするけど、読み合わせの時、じーん先輩(晴美役:じーん)と、同じセリフなのになんでこんなに違うんだろうって。


ー(演出)じーんと渡り歩かなきゃいけない人はみんな同じことを考えてそうな気がする。ちょっとみんなからプレッシャーが伝わる(笑)。


有紗:でも、じーん先輩とやったエチュードはとても楽しかったです。

なんかまゆ先輩(演出)が前、こう、じーんさんとの演技はじーんさんの醸し出す空気とかペースにスッて入れてもらえるみたいに言ってたじゃないですか。ちょっと分かった気がします(笑)なんとなく。いやすごい、ほんとすごいなと。


ー(演出)でもすごいことだよね。あんなすごい人がここにいて、一緒に芝居できるっていうのがまずなんかすごいなって。みんながそれと渡りあってるのを見て、あー、これこそ演劇だなって思うわけですよ。


ー(春楓)今回やりやすいのは、じーんさんがちゃんとできる人で、できる人の役をやってくれてるから(笑)晴美もすごく神様みたいな存在で。晴美もじーんさんみたいに、一目置かれている、そういう人なのかなって思ったら、そこは取り繕わなくていいというか。そういう意味ではやりやすいなーって思いますね。


ー(演出)すごい、そうだね、雰囲気というか。晴美とじーんがかけ合わさって、今回の公演にすごい良い影響を与えているのではないかと。


有紗:配役決めのとき、ちょっとだけ脚本を読んだじゃないですか。ちょびっとだけ晴美のところが出てきて、あーみたいな。言葉がない。この、あー!すごいなー!と思いました。すごいとしか言いようがないっていう語彙力……(笑)。


全然話違うんですけど。私、自分のデビュー公演で演じた役も「ヒィ」ってなる役で。自信というか自己肯定感が低そうな役をよくやってるなって思ってます。そういう風に見えるんですか?

でも、りさこ先輩(23デビュー公演演出)には、ほんとにその役みたいな人だねって5回くらい言われました。いい意味じゃない気がします。そんななんかビビッて見えるのかなー。


ー(演出)私が有紗ちゃんを育美に配役したのは、有紗ちゃんが育美に似てるからっていうよりは、育美の思考に耐えられそうだなって思ったから。あまりにセリフが少ないのに、出てるシーンも多いし、割と主人公ポジなのに何考えてるかよくわからないみたいな。やる人によってはバックグラウンドを考えるのが苦手で、上手くできないっていうパターンもよくあって。バックグラウンドを考える作業っていうのはそんな簡単なことじゃなくて、大変なことな訳です。育美は何考えてるかよくわかんないし、きっと頭ん中でぐるぐるぐるぐるってした末に「ポッ」みたいな感じでしゃべるみたいな人で。このカオスな思考に耐えられる人じゃなきゃ無理って思って、有紗ちゃんは他の公演とか観てても、一人で考えたりとか、一人で突き詰めるのがきっと苦手じゃないと思って(笑)有紗ちゃんならこれは耐えられるんじゃないかなと。有紗ちゃんになら育美もきっと心を開いてくれるだろうと思ったから。


有紗:きっとそこまで考えられてないんですよ。(自分自身が)もうちょっとはきはきした人間になりたいなと思うんですよ。全然違う話になってますけど。


ー(演出)それは鍛えていくしか。あの、もしありさちゃんが自分が「ヒィ」ってしてるから育美なんだって思ってたらそれは違うからね。言いたかった。


有紗:やった。


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撮影の合間に遊ぶ有紗さん


ー次はスタッフとしてのお仕事について聞いていきたいと思います。有紗さんは今回演出補佐をやっていらっしゃいますが、スタッフを務めるのは今回初ですよね。やってみていかがですか?


有紗:全然貢献できてないんですけど(笑)。


ーそんなことはないです(笑)キャストと掛けてのお仕事は大変ですか?


有紗:いや、そんな忙しくならないようにきっとまゆ先輩が考慮してくださってると。一応演出補佐だから、zoomの部屋なかったら作っておこうかなって程度です。もうちょっと貢献したいですけど演出面では無知なので。そういうスケジュール管理とかを手伝いたいっていう風に申し入れたので、そのようにさせていただいてるつもりです。


ー具体的にはどんな仕事をしていますか?


有紗:そんな、数える程しかまだ演出補佐として仕事してないです。撮影シート(撮影に必要なものをまとめた表)を作ったくらい。


ー撮影シートは大事ですよね、スタッフもとても重宝しています。


有紗:それを書くためもあって、脚本は結構読んだから、それはよかったかな(笑)。


ー最後に、撮影もまだあると思いますが、今後の意気込みと、見てくれる人達へのメッセージをお願いします。


有紗:今後の意気込みは、この後、人が多いシーンが多くなると思うので、人が多いシーンってことは、私は大体しゃべらないけどいるみたいな感じになるので、セリフがなくても東育美になれるようにがんばります。この作品は、多分自分が今本当は何を思ってるのかっていうか、何をしたいのか、表層じゃなくて、心の奥みたいなところでは、何が好きなのか、何をしたいのか、どうありたいのかっていうのをがんばって表に出していく作業をみんながしている作品なので、この作品を見てる間は、忙しい時間の中でちょっと立ち止まって、今どうしたいかっていうのを考えるきっかけになったらいいかなって。偉そうですけど(笑)。


ー他に何かアピールしたいことはありますか


有紗:ブログのトップページの桜の木は私が描きました(笑)。


ーとっても素敵な桜の木をありがとうございました!育美役の役者が描いたと思うとまたグッとくるものがありますね。


育美役の有紗さんへのインタビューでした。ありがとうございました。


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