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シーン14
昨日の小テストは散々だった。テストの存在を忘れていた七星は教科書を家に忘れ、仕方なく教科書を貸してしまった朔太郎は、一点足りずに追試決定。追試常連の七星と共に、今は再試の勉強をしている。放課後の教室は静かで、窓の外から運動部の元気の良い号令が聞こえるだけだ。真面目に教科書を...
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2021年2月19日読了時間: 4分
シーン13
「東條の進路希望書がまだ出てないんだ。お前、仲いいだろ?呼んできてくれないか。」 そんなお使いを担任から仰せつかって、透也は放課後の廊下を歩いていた。 教室からはとっくに姿を消しているからいるとしたら恐らく、というか九割九分、部室だ。あの東條晴美という演劇バカは、部活があれ...
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2021年2月18日読了時間: 6分
シーン12
「ま、一件落着って感じだねえ。」 いつもの調子でへらりと笑った夏樹が、演劇部の輪の中に入っていく。ジャージの袖をくるくると巻き、まとまりのない髪を雑に掻き上げた、いつも通りの姿。けれどその表情はいつもよりもずっと、明るいように見えた。...
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2021年2月15日読了時間: 5分
シーン11
舞台が始まる前の、ざわざわと落ち着かない空気が、ホールに満ちている。 夢乃は中ほどの席の一つに座って、ステージを眺めていた。 ここには今自分しかいないのに、まるで他の声が聞こえてくるようだ。 演劇部なんてあったんだ。 楽しみだね。 オリジナルなのかな?どんな話なんだろ。...
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2021年2月14日読了時間: 5分


シーン10
「それじゃあ、気をつけて帰るよーに。」 担任の声に意識が引き戻される。らしくもなく、ぼーっとしていたみたいだ。 クラスメイト達は帰り支度をして、各々教室を出ていく。 「夢乃―!早く行こー」 「はいはい。」 友達に声を掛けられ、夢乃も鞄をもって立ち上がった。...
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2021年2月13日読了時間: 3分
シーン9
かもめ館二階のバルコニー部分は、大事な話をする時によく使う。昔は先輩たちがこの場所に集まって、何やら真剣な顔で話しているのを盗み見るのが好きだった。ガラス戸で仕切られた室内の廊下にいる自分たちには、その会話は聞こえない。聞かせたくないだろうから、じろじろ見るのも憚られた。そ...
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2021年2月12日読了時間: 3分


シーン8
「ちゃんと見ててね、ってさ…」 大して好きでもない飴を、常備し始めたのはいつからだろう。気が遠くなるほど昔のことのような気がして、つい気怠くなってしまった。 今でもたまに、いや、毎日、気付いたら思い出している。この場所が夢と希望に満ち溢れていて、みんなが笑顔で、それで、大切...
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2021年2月11日読了時間: 6分
シーン7
「へえ〜…こんな話だっけ?」 「お前ら、この演目やったんだろうが。」 桃華のとぼけた言葉に、七星は怪訝そうな目を向けた。 昨日の学院長襲来事件が嘘のように、今日のかもめ館は静かだ。静かすぎて、不気味なくらいだった。恐らく他の部活民たちは、取り壊しに備えて新たな活動場所を探し...
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2021年2月10日読了時間: 4分
シーン6
「久しぶりだな。」 ひらひらと手を振るその人は、演劇部の面々を見て「デカくなったな、成長期か?」と呑気に笑った。見知らぬ人間の登場にきょとんとする七星の横で、朔太郎は「はあ〜?!」とやたら大きな声で驚きを露わにする。 「しょ、勝吾先輩?!」...
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2021年2月9日読了時間: 7分


シーン5
『彼女を守りたい。そう思って俺は、ヒーローになったんだ。強くなるって決めた。絶対に守る、そう約束したのに…俺はいつまでも、弱いままだ。』 そこまで読んで、心臓がキュッと捻り上げられるような、胃がムカムカするような気持ちになり、思わず溜め息をついた。脚本を読むのは、育美の日課...
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2021年2月8日読了時間: 6分
シーン4
「ああー、もう終わった。お終いだ、さようなら俺のDK時代…さようなら、俺の青春…」 高校、編入、入試なし。適当な単語を検索エンジンに突っ込んで高速スクロールをしながら、朔太郎は涙目で七星を睨んだ。 「何も終わってないだろ、別に。」...
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2021年2月7日読了時間: 3分


シーン3
生徒会が来た。 そう知らせにきた新聞部の二年生たちは、部室の前で事切れたように座り込む。他の部にも知らせに回っていたのか、廊下がざわざわと、やたら騒がしいことに気づいた。 「生徒、会?」 扉のいちばん近くに立っていた育美が混乱したように呟くと、夏樹はイラついたような溜め息を...
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2021年2月6日読了時間: 10分
シーン2
「だからさあ、お前、結局何者なワケ?なんでウチに来たんだよ。」 使い古されたソファは、腰をかけると身体が吸い込まれるように沈んでいく。どっかりと我が物顔で座る百瀬朔太郎は、ふんぞり返って、まるで王様のようだ。不機嫌そうに七星を睨む目も鋭くて、思わずゴクリと唾を飲む。一方でそ...
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2021年2月4日読了時間: 2分


シーン1
「なあ、これ、」 出し抜けに声をかけられて、育美はきゅっと肩をすぼめる。閑散としたホールの中は涼しくて、嫌になるほど静かだった。ぱんぱんになれば二百人以上は入るであろうこのホールに、今はたったの二人きりだった。呼びかけられたのは明らかなのに、育美は振り返ろうとしない。言葉を...
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2021年2月3日読了時間: 5分
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